子供部屋を2つに分ける|13.5畳を5日・32万円で仕切った18年目のリフォーム
2026/07/29
18年前に設計させていただいたお宅から、久しぶりにご連絡をいただきました。
2008年、K様邸。まだ工務店はやっておらず、設計事務所だけでやっていた頃です。個人のお住まいとしては、K様邸がいちばん最初のお客様でした。当時はご夫婦お二人。それが今は、中学生の娘さんと小学生の息子さんがいらっしゃいます。
ご相談は「子供部屋を2つに分けたい」というものでした。
「子供部屋を2つに分けたい」と言われて
K様邸の子供部屋は、22.36平米。畳にして13.5畳の、大きな一部屋です。二人のお子さんが、これまでずっと一緒に使ってこられました。
お姉さんが中学生になられて、そろそろ自分の時間や場所が必要になってきた。弟さんと同じ部屋のままでは、お互いに気を使う。ご家族としては自然な流れだったと思います。
これは、多くのご家庭が通る道です。子どもが小さいうちは広い一部屋の方が使いやすく、兄弟で遊ぶにも都合がいい。ところが上の子が中学生くらいになると、たいてい同じ話が持ち上がります。「あの部屋、分けられませんか」と。
18年前、あえて大きな一部屋にしていた
実はこの13.5畳という大きな部屋は、はじめから仕切らずに作ってあります。
2008年に設計したとき、K様ご夫婦にはまだお子さんがいらっしゃいませんでした。これから何人になるのか、男の子か女の子か、誰にも分かりません。だから決めないでおいたのです。
家を建てるとき、間取りはどうしても「今の家族」に合わせて決めていきます。ご夫婦二人なら二人の暮らしに、子どもが一人いれば一人分の部屋に。それ自体は当たり前のことです。
ただ、家族は必ず変わります。増えることもあれば、巣立って減ることもある。18年というのは、子どもが生まれて中学生になるだけの時間です。建てたときの家族の形が、そのまま続くことの方がむしろ珍しい。
正直に言うと、当時の私に18年後がはっきり見えていたわけではありません。ただ、今すぐ決めなくていいことは、決めないでおく。そうすれば後で選べる。そう考えて、大きな一部屋のまま残しました。
扉は、最初から2つ付けてあった
もうひとつ、新築のときに仕込んでおいたことがあります。

図をご覧ください。青い丸で囲んだところが、部屋の入口の扉です。ひとつの部屋なのに、扉が2か所ついています。
照明とコンセントも同じです。将来2部屋に分けることを想定して、それぞれの側に配線を入れてあります。スイッチも別々に動くようにしてありました。
つまり「壁を1枚立てれば、そのまま2部屋になる」状態で、18年間使われてきたわけです。赤い枠で囲んだところが、今回新しくつくった間仕切り壁になります。
なお、収納はK様がご自身でご用意されました。
壁紙ではなく、漆喰を提案した
当初の予定では、この新しい壁にはルナファーザーという壁紙を貼るつもりでした。2008年の新築のときに、この家で使ったものと同じ商品です。18年経っても同じものが手に入るというのは、それだけで大したことだと思います。
ただ、私の方から漆喰を塗ってはどうかとご提案しました。
理由はふたつあります。ひとつは、単純に壁紙より漆喰の方が良いところが多いから。もうひとつは、漆喰は新築でしか使えないものだと思われがちだからです。
そんなことはありません。今回のように既存のお宅の一部屋だけでも、壁一枚だけでも塗れます。リフォームやリノベーションでこそ、使っていただきたい材料です。せっかく壁を新しくつくるのなら、その一枚を漆喰にしてみませんか、とお話ししました。
漆喰そのものの良いところと、正直に言えば不便なところについては、以前まとめた記事があります。
色は、顔料を混ぜてその場で作る

今回は、白いままではなく色をつけました。
漆喰に色をつけるときは、顔料を混ぜて現場で作ります。カタログの色番号から選ぶのではありません。混ぜる量で濃さが変わりますから、「もう少し濃く」「もう少し落ち着いた感じに」という調整が、その場でできます。
色はお父様が決められ、それをお子さんたちに見せて確認する、という進め方でした。
できあがったのは、片方が深いグリーン、もう片方が濃いグレー。グリーンは私からのご提案で、グレーはお父様が選ばれた色です。どちらも子ども部屋にありがちな明るい色ではなく、落ち着いた大人びた色になりました。
写真は左官職人が塗っている最中のものです。クロスなら数時間で貼り終わる壁を、こうして手で塗っていきます。コテの跡が残り、面が均一になりきらない。それが漆喰の表情になります。工業製品のような正確さはありませんが、そのかわり同じ壁は二つとありません。
工期5日・工事費32万円
今回の工事は、工期5日、工事費32万円で終わりました。
壁を1枚立てて、両面に漆喰を塗る。それだけで済んだからです。
もし18年前に何も考えず、ただの大きな一部屋として作っていたらどうなっていたか。扉をもう1か所つけるために壁を壊し、枠を入れ、建具を発注する。片方の部屋に照明とスイッチがなければ、天井や壁を開けて配線を通し、直した跡を仕上げ直す。工期も費用も、これの何倍かにはなっていたはずです。
18年前に扉をもう1か所つけておいた分の費用は、家一軒の工事費から見れば、ごくわずかな上乗せでした。それが今回、何十万円分かの工事を要らなくしています。
家は、家族の変化についていける
ご夫婦お二人だった家に、二人のお子さんが生まれ、その子たちが中学生と小学生になりました。18年というのは、そういう時間です。
家がその変化についていけるかどうかは、建てるときの考え方でほとんど決まります。間取りをどれだけ緻密に作り込むかではなく、むしろどこを決めきらずに残しておくかの方が効いてきます。
今の暮らしにぴったり合わせた家は、住み始めたときがいちばん快適です。ただ、そこから20年、30年と暮らしていく中で、家族の形は必ず動きます。子どもが独立して部屋が余る。親御さんと同居することになる。働き方が変わって家で仕事をするようになる。
そのとき、壁を1枚立てるだけで済むのか、大がかりな工事になるのか。その差は、建てる前の打ち合わせの段階でついています。
私たちは常滑市で、自然素材と無添加の家づくりをしています。新築のご相談をいただいたときには、今のご家族の暮らしを伺うのと同じくらい、これから先どう変わりうるかをご一緒に考えるようにしています。
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まとめ
13.5畳の子供部屋を2つに分ける工事は、5日間、32万円で終わりました。壁を1枚立てて、両面に漆喰を塗り、顔料で色をつけただけです。
それで済んだのは、18年前に扉を2か所つけ、電気を2部屋分入れておいたからでした。
独立して最初にお住まいを設計させていただいたお宅から、18年経ってまたお声をかけていただけたことを、正直とても嬉しく思っています。あのとき決めきらずに残しておいた一部屋が、こうして役に立ちました。家というのは、渡して終わりではないのだと改めて思います。
子供部屋をどう作るか迷っておられる方、将来の変化が読めなくて間取りが決まらないという方は、一度ご相談ください。決めないでおくという選び方も、立派な設計です。
常滑市・知多半島で自然素材の家づくりに興味がある方、ぜひ一度モデルハウスを見に来てください。営業は一切しません。見るだけでも大歓迎です。
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ではまた!