屋上のある家は後悔する?|海を見てぼーっとできる場所をもつということ(常滑市・一級建築士の自宅)
2026/09/12
8月30日、妻と名古屋港から海津市までドライブに行ってきました。久しぶりの温泉に入って、そのあと行基寺というお寺に寄りました。岐阜県海津市の山の中腹にあるお寺で、江戸時代には高須藩の松平家の菩提寺だったところです。高い石垣が積まれていて、お城のような構えなので「隠れ城」とも呼ばれているそうです。ここの眺めが素晴らしかったです。畳にあぐらをかいて遠くを眺めているだけで、頭の中がすーっと静かになっていく感じがあります。もっとも、建築士の悪い癖で、眺めを楽しみながらも建物の傷み具合がつい気になってしまうんですが(笑)。
帰りの車の中で、そういえば自分も家で同じことをしているなと思いました。常滑市の私の自宅には屋上があって、そこから海が見えます。何をするわけでもなく、ただ海を見てぼーっとする。今日はその「屋上のある家」の話をしたいと思います。

屋上のある家は後悔する?私の答え
「屋上のある家 後悔」という言葉で検索すると、いろいろな声が出てきます。せっかくつくったのに使わなくなった、夏は暑くて出られない、防水の手入れにお金がかかる。どれも本当のことだと思います。そのうえで私の答えを先に書くと、屋上は「何かをする場所」ではなく「何もしない場所」と割り切れる方には、とてもいいものだと思っています。我が家の屋上の使い方ははっきりしていて、ぼーっとする場所です。海を眺めて、風に当たって、しばらくして降りてくる。友達が来たときには、たまにビールを飲む。それくらいです。何もしなくていい場所だと思っていれば、階段を上がる理由は「ちょっと海を見たい」だけで足ります。
とはいえ、良いことばかり書いても参考にならないので、一級建築士として知っておいてほしいデメリットを、先に正直に書いておきます。
屋上がある家のデメリット|建築士として正直に
防水の手入れは、必ずやってくる
屋上は、雨を真上から受け止める屋根そのものです。屋上にする部分は陸屋根(ほぼ平らな屋根)になるので、傾いた屋根のように雨をすぐ流してはくれません。だから床の表面を防水層で覆って、水を中に入れないようにしています。戸建ての屋上やバルコニーでよく使われるのがFRP防水で、ガラス繊維とプラスチックの樹脂を重ねて固めたものです。軽くて硬く、歩いても平気なのが良いところですが、紫外線や熱で表面は少しずつ傷んでいきます。一般的には、表面のトップコートを5年前後で塗り替え、防水層そのものも10〜15年くらいで点検ややり替えを考えるのが目安と言われています。正直に言うと、我が家はトップコートの塗り替えはやっていません・・。ただ、防水層のやり替えはやったほうがいいです。我が家も去年、FRP防水のやり替えを1回しました。屋上をつくるということは、この手入れとずっと付き合うということでもあります。

屋上のある家のメンテナンス費用は「防水の周期」で見ておく
費用は屋上の広さや防水の種類、下地の傷み具合で大きく変わるので、ここでは数字は出しません。ただ、10〜15年ごとに必ずやってくる出費だということは、家を建てる前の資金計画に入れておいてほしいと思います。雨漏りしてから慌てて手配しても、直るまでのしばらくの間は、家の中のあちこちにバケツが並んでぽたぽた、ということになります。屋上に限らず、家の手入れは症状が出る前に気づいてあげるのが一番です。
夏の屋上と、その真下の部屋は暑くなりやすい
最近の夏はめちゃくちゃ暑い。知多半島も、真夏の日中の屋上は、床が日に焼けて長くいられる場所ではありません。それに、屋上の真下の部屋は日射の熱をまともに受けやすいので、屋根の断熱をしっかりしておかないと、その部屋がむっと暑くなります。日よけを置けるようにしておく、床の色を熱をためにくい明るめにする、床を浮かしてタイル貼りにするといった工夫も効きます。
屋上バルコニーで後悔しがちなのは「使わなくなること」
屋上バルコニーや屋上テラスで後悔したという声で一番多いのは、結局これかもしれません。階段の上り下りが面倒、日陰がなくて暑い、何に使うか決めていなかった。階段を上がる理由は、シンプルなほうが続くように思います。
屋上のある家で良かったこと|海を見てぼーっとする
では、なぜそれでも屋上がいいのか。私にとっての答えは、やっぱり海を見てぼーっとできることです。家の中にいると、どうしても目の前にやることが見えてしまいます。図面、パソコン、片付けていない書類。ところが階段を上がって屋上に出ると、目に入るのは海と空だけ。それだけで、頭の中のざわざわが少しずつ静かになっていきます。行基寺で感じたのと同じ感覚が、自宅の階段を上がるだけで手に入る。これはなかなかありがたいことだなと思います。

59歳にもなると、何もしない時間のありがたさが身にしみます。ところが、同じ屋上でも子どもにとっては話がまるで違うようです。屋上に登ると、子どもたちは興奮します。セントレア(中部国際空港)を発着する飛行機も、船も、電車も見えるから。大人にとってはぼーっとする場所、子どもにとってはワクワクする場所。同じ場所なのに、見る人によってこんなに顔が変わるのは面白いなと思います。この夏、姪っ子の子どもたちが遊びに来たときも、メジャーの使い方を教えたら、ずっと何かを測って遊んでいました(笑)。子どもは何でも遊びに変えてしまう。大人のほうは、つい場所に役割を持たせたがる。屋上も「何かに使わなきゃ」と思うとしんどくなりますが、「何もしなくていい」と思えば、それだけで十分に価値のある場所になるんだと思います。友達とビールを飲むときも、特別な準備は何もしていません。
もうひとつ、我が家の屋上は全面に水を張ることができます。水を張れば、子どもたちの水遊び場にもなる屋上です。そして、防災用に水をためておける仕組みも、屋上にできています。水を張る屋上だからこそ、防水の手入れはなおさら大事になります。
屋上をつくる前に確かめておきたいこと
これから屋上のある家を考えている方に、打合せの前に一度確かめておいてほしいことをまとめておきます。
- 屋上で何をするか、ひと言で言えるか(「ぼーっとする」でも十分です)
- 防水の種類と、塗り替え・やり替えの周期を聞いているか
- 屋上の真下の部屋の断熱は十分か
- 排水口の数と、掃除のしやすさ
- 手すりの高さ(1.1mが目安)と、足がかりになるものの置き場所
- 階段の上り下りが、10年後、20年後も苦にならないか
常滑市や知多半島は海が近く、少し高さを取るだけで海が見える土地も少なくありません。土地を見に行くときに、二階や屋上の高さからどんな景色が見えるかを想像してみるのも、家づくりの楽しみのひとつだと思います。家の中に、何もしなくていい場所がひとつある。それだけで暮らしは結構変わるのかもしれません。屋上に限らず、そういう場所を家のどこかにつくっておくといいと思います。
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