シロアリ対策は本当に必要?薬剤散布より100倍効く「湿気管理」の話|一級建築士が解説

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シロアリ対策は本当に必要?薬剤散布より100倍効く「湿気管理」の話|一級建築士が解説

2026/06/27

我が家では毎年、畑で採れた梅で梅干しを作ります。今年も完熟して黄色くなった梅を新聞紙に広げて、ひとつずつ選別するところから始めました。畑から採ったばかりの梅はまだ青いものが混ざっていて、それを陽の当たる縁側にしばらく置いておくと、家中が何とも言えない甘い香りに包まれます。日本の昔の家には、こういう「季節の手仕事」を受け入れる場所が当たり前にありました。

梅干しは塩で漬けます。精製塩ではなく、海から採れた天然のミネラルがそのまま残っている塩。なぜなら塩に含まれる微量のミネラルこそが、梅と共に長い年月発酵していくときの主役だからです。先人達は経験的にそれを知っていたんだなと、毎年仕込みをしながら感心します。ちなみに去年は梅酒の方に欲を出して梅を取りすぎてしまって、肝心の梅干し分が足りなくなりました(笑

ところで、梅雨。

梅の収穫と入れ替わるように、知多半島には湿った空気が押し寄せてきます。常滑のモデルハウスでも、6月になると床下の通気と空気の流れに毎日目を配るようになります。なぜなら梅雨は人にだけでなく、家にとっても一番厳しい季節だからです。そして、家の中で誰よりも先に梅雨の異変を察知する生き物がいます。シロアリです。


結論:シロアリ対策の本質は「湿気管理」。薬剤散布は最後の手段

先に答えを言います。シロアリ対策で本当に大事なのは、5年ごとに薬剤を撒くことではありません。シロアリが好きになれない家にしておくこと、つまり湿気を呼ばない設計こそが本物の予防策です。

業者さんから「5年ごとの定期点検が必要です」「薬剤の効果が切れますから再処理してください」と言われて、何の疑問もなく契約している方は多いと思います。ただ、その薬剤が本当に必要かどうか、まず立ち止まって考えてみてもいいかもしれません。

家に薬を撒き続けるという行為は、よく考えるとなかなか不思議な話です。ましてや、毎日その家で寝起きする家族がいる。子どもがハイハイをする。ペットが床に寝そべる。そういう場所に、年月をかけて少しずつ薬剤を蓄積させていく。それは本当に「家を守る」ことになっているんだろうか、と。


そもそもシロアリって、どんな虫?|湿った木にしか興味がない

シロアリは、よく「家の天敵」のように扱われますが、もう少し正確に言うと「湿った腐りかけの木の分解者」です。森の中で倒れた木を土に返す、自然界の大事な掃除屋さん。だから本来は人間の住む家とは関わりのない存在のはずでした。

シロアリが食べる木にはひとつ条件があります。木材の含水率が高いことです。乾いた健康な木は、シロアリにとって硬すぎて、栄養も摂りにくい。だから彼らが好むのは、雨漏りで湿った柱、結露で濡れた土台、地面からの湿気をたっぷり吸い上げた床下の木材。要は「家のどこかに異常が起きている場所」を彼らが教えてくれている、とも言えるんです。

ここ大事なところなんですが、シロアリは「家の異常」を後追いで知らせに来る警報装置のような存在なんです。だから本来やるべきは、警報を消すこと(=薬剤散布)ではなく、警報が鳴らない家を作ること(=湿気管理)です。

そしてもうひとつ。湿気が無いことも重要ですが、そもそも「シロアリに食われにくい木」を使うことも同じくらい重要です。具体的には、昔ながらの天然乾燥材や月齢伐採材ですね。これは設計のところで詳しく書きます。


「シロアリ駆除は必要ない」と言われる本当の理由

最近、ネットで「シロアリ駆除 必要ない」という検索が増えています。それには理由があって、業界内でも「シロアリ予防 無駄」という議論が出ているからです。

5年ごとの薬剤散布、本当に必要?

一般的なシロアリ駆除業者の保証期間は5年です。なぜ5年かというと、使われている合成殺虫剤の効果が3〜5年で消えてしまうから。日本ホウ酸処理協会の資料には、はっきり「合成殺虫剤(農薬)は効果が3〜5年で無くなるから、注意が必要」と書かれています。

5年ごとに数十万円かけて再処理を繰り返す。これを30年続けると、それなりの金額になります。けれど効果は積み重ならず、毎回ゼロからやり直し。一度の処理で35年効くものと比べたら、長い目で見るとどっちがお値打ちかは一目瞭然です。これが住宅業界の「当たり前」だったんですが、ちょっと立ち止まって考える方が増えてきました。

合成殺虫剤(ネオニコチノイド系)が抱える本当の問題

問題はお金だけじゃないんです。シロアリ駆除に一般的に使われているネオニコチノイド系の合成殺虫剤には、いくつか気になる報告があります。

公益社団法人日本木材保存協会の試験結果によると、農薬系合成殺虫剤を使用した場合の木材劣化率は34%にのぼるとされています。3割以上の木が劣化するということです。

さらに、東京都医学総合研究所の木村-黒田純子先生、環境脳神経科学情報センターの黒田洋一郎先生の研究『有機リン系,ネオニコチノイド系農薬の危険性』では、ネオニコチノイド系農薬が低濃度でも子どもの脳に影響を与え、自閉症やADHDなどの発達障害増加の原因となる可能性が報告されています。

家族の健康を守るために家を建てるはずなのに、その家の床下に何十年も子どもの脳に影響しうる薬を撒き続ける。これって、ちょっとおかしくないですかね。


湿気を呼ばない家の設計|2つのゾーン

ではどうすればいいか。答えはシンプルで、湿気をためない家にすること。これだけです。具体的には2つのゾーンを設計段階で整えます。

①基礎パッキン(御影石)で床下に常に風を流す

シロアリ対策の話に直接「御影石の基礎パッキン」と言うと、ピンと来ないかもしれません。御影石そのものがシロアリを殺すわけではないからです。ただ、床下に常に風を流して湿気を抜くという意味で、結果的にシロアリが寄ってきにくい環境を作ってくれます。

弊社では基礎と土台の間に御影石の基礎パッキンを入れています。これによって床下全周にずっと風が抜ける状態を作ります。一般的なゴム製のパッキンは経年劣化しますが、御影石は1000年経っても劣化しません。法隆寺の柱が1300年以上残っているのと同じで、鉱物素材は時間を味方にできるんです。

床下が乾いていればシロアリは寄ってこない。これがいちばんの予防になります。

②天然乾燥材・月齢伐採材という選択

これは過去のブログでも何度か書いてきましたが、構造材に使う木の選び方が決定的に効きます。人工乾燥(炉で強制的に乾燥させた木)は、木が本来持っている防腐成分が抜けてしまい、シロアリに食われやすくなります。

一方で天然乾燥(葉枯らしで山に3か月以上置く)の木は、シロアリが嫌うフェノール成分が残ったままなので、虫に食われにくい。

さらに月齢伐採といって、冬の下弦の月の時期に伐った木を使うと、でんぷん質が少ない木になります。ある大学の研究データでも、これが腐朽菌やシロアリへの強さに繋がることが示されています。伊勢神宮の20年に一回の式年遷宮の木も、この天然乾燥の月齢伐採材です。

これらを組み合わせれば、薬剤に頼らなくてもシロアリが寄ってこない家は、設計でちゃんと作れます。


それでも気になる方へ|薬を使うなら「ホウ酸」一択

ここまで読んで「設計で湿気管理しても、それでも100%安心とは言えないんでしょ?」と思った方もいるかもしれません。その通りです。完璧はないので、念のための保険は欲しい。そう考える方には、私はホウ酸処理(ボロンデガード)をおすすめしています。

合成殺虫剤 vs ホウ酸 比較表

ざっと比較するとこんな感じです(ホウ酸処理協会の資料および公的試験結果より)。

  • 木材劣化率:合成殺虫剤 34% / ホウ酸 0.01%以下
  • シロアリ保証期間:合成殺虫剤 5年 / ホウ酸 35年(業界最長)
  • 効果の持続性:合成殺虫剤は3〜5年で効果消失 / ホウ酸は分解・揮発しないので長期持続
  • 室内空気への影響:合成殺虫剤は揮発してシックハウスのリスク / ホウ酸は揮発しないので空気を汚さない
  • 子どもへの影響:ネオニコチノイド系は脳への影響報告あり / ホウ酸はほ乳類に低毒性

桁が違います。

ボロンデガードって何?

ボロンデガード(正式名称:ボロンdeガード®)は、ホウ酸を主原料にした総合的な防腐防蟻処理システムです。弊社でもお客様のご要望があれば取り入れている、信頼できる処理工法のひとつです。

施工は誰でもできるわけではなく、専門の教育プログラムを修了して登録された「ホウ酸施工士」だけが扱える仕組みになっています。素材の力だけでなく、施工品質の担保まで含めて整っているのが特徴です。

ホウ酸が安全な理由

ホウ酸って聞くと「薬じゃないの?」と心配される方がいますが、実はとても身近な物質です。ヴァイオリンの名器ストラディバリウスの保存にも使われています。

私たちが日常で使う目薬にも入っているし、温泉の成分として湧き出ていることもあるし、普段食べている野菜にも自然に含まれている、いわば天然の鉱物なんです。

ほ乳類(人間・犬・猫など)には腎臓で速やかに排出されるので影響が小さく、一方でシロアリのように腎臓を持たない昆虫には致命的に効きます。だから「人にやさしく、虫にだけ厳しい」というユニークな性質を持っているんです。

でも一番大事なことは

ホウ酸も万能ではありません。ホウ酸を撒いても、家がそもそも湿気だらけだったら、結局シロアリは寄ってきます。主役はあくまで設計(湿気管理)、ホウ酸は脇役(保険)。この順番を間違えると、結局は薬頼みの家づくりに戻ってしまいます。


新築・既築別|シロアリに強い家のチェックリスト

最後に、新しく家を建てる方も、すでに住んでいる方も、両方が今日からできることをまとめました。

【新築のとき】

  • 御影石または同等の長寿命基礎パッキンを採用しているか
  • 構造材は天然乾燥材か(人工乾燥材ではないか)
  • 月齢伐採材まで踏み込めると尚良し
  • 床下換気が機械頼みではなく自然換気で成立しているか
  • 保険としてホウ酸処理を入れる場合は、ホウ酸施工士の有資格者か

【すでに住んでいる方】

  • 年に一度、床下を覗いてもらう(業者でも工務店でもOK)
  • 雨漏り・水漏れの兆候を早めに対処する
  • お風呂や洗面の床がフカフカしてきたら水が回っているサイン
  • もし薬剤散布をする場合、合成殺虫剤ではなくホウ酸系を選ぶ
  • 床下換気扇は「最後の手段」。まず通気経路を確認するのが先

家は建てたら終わりじゃないんですよね。畑の野菜と一緒で、毎年の小さな手入れが30年後・50年後の住み心地を決めます。梅干しを毎年仕込むみたいに、家にも季節の手入れを続けていけるといいなと思います。

シロアリ対策は薬じゃなくて、まず設計と日々の観察から。これが30年家を建ててきた私の本音です。常滑市・知多半島は梅雨と湿気が独特の土地柄ですから、地元で家を建てる方は特に、湿気を呼ばない設計の重要性を建てる前にしっかり考えてみるといいかもしれません。

ではまた!



家の「空気感」や自然素材の心地よさは、文章だけではなかなか伝わりません。まずは一度、モデルハウスに立ち寄ってみてください。営業は一切しません。家が静かに体を整えてくれる感覚を、ぜひご自身で確かめていただけたらと思います。

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