土間のある家のデメリットを建築士が正直に話す|後悔しない5つの設計ポイント -->

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土間のある家のデメリットを建築士が正直に話す|後悔しない5つの設計ポイント -->

2026/05/20

先日、常滑市で大正時代に建てられた古民家の調査をさせて頂きました。お施主様の手入れが行き届いていて、ぴかぴかに磨かれた柱と、ひんやりとした広い土間が今でもしっかり生きている、それはそれは綺麗なお家でした。図面が一枚もないので部屋ごとに寸法を取らせて頂いていたのですが、ふと土間に立ち止まった時に、ああ、これがかつての日本の家の真ん中だったんだなあと感慨深いものがありました。

最近お客様から「土間のある家にしたいんですけど、デメリットも教えてください」とご相談を頂くことが増えてきました。雑誌やSNSで見て憧れた、でも本当に住みやすいのか不安、というお声です。私は土間が大好きで設計でも積極的に提案させて頂きますが、ただ正直に申し上げると、土間は使い方を決めずに作ると間違いなく後悔します。今日はそのあたりを建築士として正直にお話ししたいと思います。


江戸時代の土間は「使う理由」がはっきりしていた

そもそも土間という空間は、江戸時代から続く日本の家の中心でした。明治時代になると徐々に減っていきましたが、それまでは農家でも町家でも、家の真ん中には必ず土間がありました。なぜ無くなっていったかというと、暮らし方が変わって「使う理由」が無くなっていったからなのです。逆に言えば、江戸時代の土間が活きていたのは、はっきりとした用途と役割があったからとも言えます。今、土間を作って後悔される方の多くは、ここをすっとばして「なんとなくおしゃれだから」で作ってしまうことが原因です。

農家の土間と町家の通り土間

農家の土間は「広間型」と呼ばれていて、玄関を入るとどーんと広い土の床が広がっていました。ここで炊事をして、農作業の道具を手入れして、雨の日は縄を綯ったり俵を編んだり、時には牛や馬まで一緒に寝ていました。台所であり、作業場であり、家畜の居場所でもあった、まさに家の心臓部です。一方、京都や愛知の常滑のような町家には「通り土間」というものがありました。これは入口から家の奥まで細長く貫く土間のことで、ここで商売をしたり、近所の方をお招きしてお話したり、台所として使ったりと、生業と暮らしが重なる場所でした。

共通していたのは「ハレとケの間」だったこと

面白いのは、農家の土間も町家の通り土間も、共通する役割があったことです。それは「ハレとケの間」、つまり外の世界(パブリック)と家の中(プライベート)の中間という性格です。お客様が来た時にいきなり座敷に上げるのは失礼にあたるので、まずは土間で立ち話をして、それから框(かまち)を上がって座敷へ、という段階的な接客の作法がありました。だから江戸時代の土間は、靴を脱ぐ脱がないという物理的な仕切りであると同時に、人間関係の距離を絶妙に保つ装置でもあったのです。先人の暮らしの知恵というのは、本当によくできています。


土間のある家のデメリット5つ

江戸時代の話が長くなりましたが、ここからは現代の家で土間を作る時のデメリットを、設計現場で実際にお聞きする「あるある」も交えて正直にお話しします。後悔される方には必ず共通点がありますので、是非ご自身の計画に当てはめながら読んでみてください。

①冬は寒い、これが一番多い後悔

土間に使うコンクリートやモルタル、タイルは熱を伝えやすい材料です。だから真冬になると床がキンキンに冷えて、その冷たさが家全体に伝わってきます。常滑市は知多半島の中でも比較的温暖な地域ですが、それでも1月2月の朝はかなり冷え込みますので、無断熱の土間を作ってしまうと「リビングのソファーまで寒い」という事態になります。私もお客様のお家にお伺いした時に、足元からじんわり冷気が上がってきて「これは住む方は大変だ」と感じたことがあります。後で聞いたら冬は半分物置になっていました。これがデメリット第1位です。

②結露と湿気、知多半島の夏も気をつけて

冷たい土間は、夏の湿気の多い時期にも問題を起こします。室内の暖かく湿った空気が冷たい床に触れると結露が発生して、土間の上に水玉がぽつぽつと出てくるのです。知多半島は梅雨と夏に湿度が高くなりますので、結露で滑って転びそうになったというお話も聞きます。さらに結露が続けば、土間に置いたものがカビたり、隣接する木部が腐ったりという問題に繋がります。換気と除湿をしっかり考えずに土間を作ると、思わぬ場所に湿気の被害が出ることがあります。

③段差問題、年を取ってから効いてくる

土間と居室の間には框があり、だいたい15〜30cmほどの段差ができます。若いうちは何ともない段差ですが、これが意外と曲者で、70代80代になった時に毎日この段差を上り下りするのが負担になります。「土間を作ったけど、母が腰を悪くしてから一度も使わなくなった」というお話も実際にお聞きしました。バリアフリーを考えるなら段差は浅く、もしくは段差をなくす設計が必要です。長く住まう家ですので、20年30年先の暮らしを想像することが大切です。

④掃除が大変、特にタイル目地は注意

土間は外との境目にあるので、靴の砂、雨水、ペットの泥、季節によっては虫の死骸まで入ってきます。モルタルや洗い出し仕上げは比較的お掃除しやすいですが、タイルの目地は汚れが入ると取れにくく、何年も住むうちに目地だけ黒ずんできます。「土間を作るのはいいけど、誰が掃除するのか」を家族で決めておかないと、ご家族の中で押し付け合いになります(笑 ちなみに私の事務所のモデルハウスの土間は、月に一回くらい水を流してデッキブラシでガシガシやっています。

⑤コストが高い、面積に対して仕上げ単価が上がる

土間はフローリングよりも仕上げ単価が高くなる傾向があります。タイルなら材料費と施工費、モルタルなら左官の手間、洗い出しなら職人さんの腕に頼る部分が大きく、どの仕上げを選んでも一般的なフローリング工事より割高になります。さらに土間の下に断熱材を入れる、床暖房を入れるとなると、追加で数十万円のコストが乗ります。「土間を3畳くらい」と気軽にご希望されることもありますが、その3畳が見積で60万円80万円になることもありますので、事前に予算感を共有しておくことが大切です。


後悔しない土間設計の5つのポイント

ここまでデメリットばかりお話ししてきましたが、土間が悪いわけでは全くありません。むしろ使い方さえ決まっていれば、これほど豊かな空間は他にありません。デメリットを潰しながら土間を活かす設計のポイントを5つお話しします。

①床暖房との組み合わせで寒さ対策

寒さ問題の答えは断熱と床暖房です。土間の下に断熱材をしっかり入れて、その上に温水式の床暖房を仕込めば、冬でも素足で歩けるくらい暖かい土間になります。温水式は立ち上がりがゆっくりですが熱が長持ちしますので、土間との相性が非常に良いです。電気式よりもランニングコストも抑えられます。寒さで使わなくなった土間ほどもったいないものはないので、断熱と床暖房はセットで考えて頂きたいです。

②床材選び、タイル・モルタル・洗い出しの使い分け

土間の仕上げは大きく分けて3種類です。タイルは高級感があってお掃除も比較的楽、デザインのバリエーションも豊富です。モルタルはコストを抑えながら無骨な雰囲気が出せて、最近のシンプルな家との相性が良いです。洗い出しは昔ながらの仕上げで、小石を入れて表面を洗い出して石を浮き上がらせる手法で、滑りにくくて味のある質感になります。古民家の土間の多くは三和土(たたき)という、土と石灰とにがりを混ぜて叩き締めたものですが、これは現代ではほぼ手に入らない仕上げです。お住まいの雰囲気とご予算で選ばれると良いと思います。

③面積は3〜4.5畳、家族の人数で決める

土間の広さは、3畳から4.5畳が使いやすいです。これより狭いと荷物を置くだけで終わってしまいますし、広すぎると掃除が大変で持て余します。ご夫婦お二人なら3畳、お子さんがいて自転車も置きたいなら4.5畳、というのが目安です。30坪の平屋で土間を計画される方が増えていますが、その場合は玄関と土間を一体化させて4畳ほど確保するのがバランスとしてちょうど良いです。

④動線設計、土間から何に繋ぐか

土間で大切なのは「どこに繋がっているか」です。玄関土間からそのまま洗面所に行ければ、雨で濡れた服を脱いでお風呂に直行できます。土間からパントリーに繋げば、お買い物の荷物を靴のまま運び込めます。土間からキッチンに繋げば、後ほどお話しする「通り土間×キッチン」の暮らしが実現します。動線が悪い土間は、ただの広い玄関で終わります。

⑤換気と除湿、24時間換気の経路を意識する

結露と湿気を防ぐには、空気が流れる設計が必須です。土間の上に小窓を一つ付けるだけでも、空気の抜け道ができて湿気が溜まりにくくなります。また、漆喰の壁を土間に隣接させると、漆喰の調湿性能が湿気を吸ったり吐いたりしてくれて、土間まわりの空気がぐっと安定します。我が家のモデルハウスも土間まわりは全て漆喰仕上げにしていますが、梅雨時でもじめっとした感じが少ないです。


現代の土間、3つの使い方の提案

さて、ここからが今日一番お伝えしたい話です。土間で後悔する人の共通点は「用途を決めずに作っている」ことだとお話ししましたが、では具体的にどう使えばいいのか、私が設計でよくご提案する3つの形をご紹介します。

①玄関広めの土間、趣味道具と雨の日の物干し

一番ご提案が多いのは、玄関を広めに取って土間にする形です。ベビーカーや自転車、ゴルフバッグ、キャンプ道具、釣り道具、子どもさんの三輪車、こういった「靴で扱いたいもの」を一気に置けます。さらに天井に物干し竿用のフックを仕込んでおけば、雨の日の洗濯物干しスペースになります。ペットを飼っているお家なら、お散歩から帰った時に土間で足を拭いてからお家に上げられるので、室内が汚れません。これだけでも土間を作る意味は十分にあります。

②趣味専用の土間、DIY・薪割り・ガーデニング

趣味のための土間というのも、ご提案するとお客様の目が輝きます。DIYが好きな旦那さんなら、土間に作業台と工具棚を置いて、週末は木屑を散らかしてもいい場所として確保しておく。薪ストーブを置かれるお家なら、薪の保管と薪割りスペースを兼ねる。ガーデニングがお好きな方なら、土と鉢を扱う場所として使われます。ポイントは「ここは汚れていい場所」と家族で決めることで、リビングを綺麗に保つための逃がし弁になります。趣味って大事ですよ、人生の質に関わります。

③通り土間×キッチンとおしゃべりスペース、江戸時代の暮らしが蘇る

そして3つ目が、私が一番おすすめしたい形です。これは江戸時代の町家の通り土間を、現代の暮らしに合わせて再解釈したものです。以前、無添加住宅で建てさせて頂いたお客様のお家で、家の入口から奥まで貫く細長い土間を作って、そこにキッチンを配置して、テーブルと椅子を置きました。靴を脱がずに座れる小さなおしゃべりスペースのある土間です。

これがとても良かったんです。突然ご近所さんがお醤油を借りに来られた時、これまでなら玄関先で立ち話で終わるところが、土間の椅子に座って一緒にお茶を飲める。靴を脱がなくていいから、相手も気を遣わない。でも、家の暖かさや家族の気配はちゃんと伝わる。これがまさに、江戸時代の「ハレとケの間」の役割そのものなんです。先ほどお話しした通り土間の役割が、現代の暮らしの中で自然に蘇った例だと感じます。

ところが面白いのは、設計の時点ではここまで意図したわけではなかったということです。「ご近所さんとの距離が良くなりました」とお客様から教えて頂いて、ああ、先人の知恵というのは形だけ真似てもちゃんと機能するんだなと、私の方が勉強させて頂きました。


平屋×土間で30坪に収める間取りのコツ

最近は平屋に土間を組み合わせたいというご相談が増えています。30坪の平屋というと、リビング・ダイニング・キッチン・寝室・水まわりで結構いっぱいになりますので、土間をどう収めるかが鍵になります。コツは「玄関と土間と廊下を兼用させる」ことです。玄関から土間を通って奥に進むと、左右にリビングと水まわりが配置される、という配置にすれば、廊下の面積をそのまま土間に変換できます。

また、平屋の場合は土間の天井を高く取れますので、開放感を演出するのにも向いています。屋根の勾配なりに天井を上げて、土間の上だけ吹き抜けに近い空間にすると、コンパクトな平屋でもぐっと豊かな印象になります。30坪という限られた中で土間を活かすには、平面だけでなく断面で考えることが大切です。常滑市・知多半島は土地の広さに余裕がある地域も多いので、平屋×土間の暮らしは相性が良いと感じています。


まとめ|土間は「用途を決めて作る」が最大のコツ

土間のある家のデメリットを5つお話ししましたが、振り返ってみると、すべて「用途を決めずに作る」ことから生まれる後悔だということがわかります。寒い・湿気る・段差が辛い・掃除が大変・コストが高い、これらは土間そのものの欠点ではなく、設計と使い方で解決できる課題です。逆に言えば、江戸時代の農家の土間や町家の通り土間が何百年も生き続けたのは、用途と役割がはっきりしていたからなのです。

家づくりは、流行を追うのではなく、暮らしから逆算して空間を決めていくことが何より大切です。土間に憧れている方は、まず「何のために土間が欲しいのか」を一度ご家族でお話しされてみてください。それが決まれば、デメリットの大半は設計でクリアできます。先人が残してくれた土間という知恵を、現代の暮らしに合わせて活かしていく、それが本当のSDGsであり、後世に残せる家づくりだと私は思っています。



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