吹き抜けリビングで後悔しない。「将来床にできる設計」を最初から考える理由
2026/03/07
暖かくなり今年も野菜の育苗の時期が来た。
先日、事務所の近くにある畑へ久しぶりに行ったら、ビニールハウスがごっそり破れていた。
強風のせいだ。
正直かなりショックだった。昨年、妻と二人で苦労して建てたビニールハウスだったから。
そのとき、ふと頭に浮かんだのが「吹き抜けリビング」のことだった。
開放感と、構造的な強さ。このふたつは、実は最初から両立させておかないと、あとで取り返しがつかなくなる。
今日は、吹き抜けリビングをつくるときに私が必ず考えること――「将来、床に変えられる設計」――についてお話しします。
吹き抜けは「つくってから後悔」が多い選択肢のひとつ
知多半島でも常滑市でも、吹き抜けリビングは根強い人気があります。
実際に住んでみると「空が見える」「光が入る」「家族の気配が感じられる」――これは本当にその通りで、私が設計した吹き抜けのある家に住んでいるお客様からも「やっぱり吹き抜けにして良かった」という声をたくさんいただいています。
ただ、後悔の声も確かにある。
「子どもが大きくなって個室が必要になった」
「冬は暖気が上に逃げて寒い」
「冬は思ったより寒くて……」
後日お邪魔すると、吹き抜け部分に簡易的なもので蓋をしているお客様もいる。冬の暖気が逃げるのを少しでも防ごうとされているのだ。気持ちはよくわかる。
将来「床に変えられる」吹き抜けと、変えられない吹き抜けの違い
吹き抜けを将来床に変えるには、大きく3つの条件が必要です。
① 梁(はり)が最初から入っているかどうか
吹き抜け部分に床を張るためには、床を支える梁が必要です。最初の設計段階で梁を仕込んでおけば、将来の計画変更に対応できるだけでなく、今の吹き抜けそのものの構造強度も上がります。梁は「将来のための備え」であると同時に、「今の家を強くする」ものでもあるのです。逆に梁なしで吹き抜けをつくると、後から床を張る工事が大掛かりになるだけでなく、構造的にも不利な状態が続くことになります。だから私はほぼすべての吹き抜けに梁を入れることをお勧めしています。
② 耐震計画の中に「吹き抜けの穴」が含まれているかどうか
ここが、冒頭のビニールハウスの話とつながります。吹き抜けは構造的に「穴」です。穴があると、その分だけ建物の剛性(かたさ・ねばり)が下がります。知多半島は海に近く、台風や強風の影響も受けやすい地域です。耐震性の計算の中に「この吹き抜けがある状態で成立しているのか」を確認することが重要です。
そして将来床を増やす場合、この耐震計画も変わる可能性があります。「増やせる設計」とは、梁だけでなく構造全体で考えておくことを意味します。
③ 照明・配線の計画が「将来の床」を想定しているかどうか
吹き抜けの照明は、1階と2階の梁のあいだあたりに壁付けで設けることが多いです。高い位置に照明を付けると電球交換が大変になるため、手の届きやすい高さに計画しておくのが基本です。そして将来床を設けることを想定するなら、もう一点大切なことがあります。それは2階への電気配線をあらかじめ隠蔽(いんぺい)しておくことです。後から配線を通そうとすると、壁の中を通せないため露出配線になり、見た目が良くありません。床をつくる前に、配線だけ先に仕込んでおく。こうした「見えない準備」が、将来の仕上がりと工事コストを大きく左右するのです。
「開放感」と「構造の強さ」は最初から両立できる
ビニールハウスが破れたあと、「骨組みをもっと頑丈にすればよかった」とも思いましたが、実はそれだけでは解決しない。ビニールハウスは規格品なので骨組みを自由に変えるわけにもいかないし、そもそも風に対して大切なのは「強く受け止める」ことより「うまく逃がす」ことなのだと気づきました。
建物に「風の逃げ道」をそのまま取り込むのはなかなか難しい話ですが、「梁を入れておくことで空間の使い方が広がる」という考え方は、ビニールハウスにも通じます。たとえばビニールハウスに横梁があれば、そこに棚板を渡して収納スペースにできる。基本的にビニールハウスは斜め張りの規格品なので、そういう発想はあまりないかもしれませんが、梁ひとつで空間の可能性が変わるというのは面白いと思います。
家の吹き抜けも同じです。
最初から「将来床を増やせる骨格」を仕込んでおけば、今は広々とした吹き抜けリビングを楽しみながら、子どもが成長したタイミングで個室に変えることもできる。開放感と可変性は、設計の段階で両立させておくことができるのです。
実際の設計でどう判断しているか
私が吹き抜けのある家を設計するとき、最初から「可変性のある空間」として提案するようにしています。
10年後、20年後のことを今の時点で具体的にイメージできる方はほとんどいません。だからこそ、最初から「変えられる余白」を仕込んでおくことが大切です。
たとえば、娘さんがいるご家族を想定してみましょう。娘さんが結婚して家を出た。しかしその後、さまざまな事情で子どもを連れて実家に戻ることになった――そんなとき、2階の吹き抜け部分に床を設けて、娘さんと孫の居場所をつくることができます。息子さんのご家族が同居することになった場合でも、吹き抜けに床を張って二世帯住宅として使うことが考えられます。家族の形は変わります。だからこそ「変えられる吹き抜け」は、常滑市をはじめ知多半島エリアで長く家に住み続けるご家族にとって、とても理にかなった選択だと私は思っています。
また、吹き抜けリビングは開放感がある分、冬の暖かさを保つ工夫も大切です。予算が許すようであれば、床暖房や薪ストーブの設置もあわせてご提案しています。薪ストーブは吹き抜けとの相性が抜群で、炎の揺らぎが空間に表情を与えてくれます。自然素材の家との組み合わせは特に気持ちが良いものです。
吹き抜けを計画するときのチェックリスト
最後に、吹き抜けを検討しているご家族にお伝えしたいチェックポイントをまとめます。
- 将来、床に変える可能性があるか?(ある場合は梁の仕込みを確認)
- 吹き抜けがある状態での耐震計算がされているか?
- 常滑市をはじめ知多半島エリアの風環境(台風・強風)が考慮されているか?
- 照明は壁付けなど手の届く位置に計画されているか?
- 将来の床づくりを見越して、2階への電気配線があらかじめ計画されているか?
- 冬の暖気対策(シーリングファンや全館空調)が設計に含まれているか?
- 将来床を増やした後の部屋レイアウトを想定しているか?
どれかひとつでも「わからない」があれば、ぜひ一度ご相談ください。
とめ:吹き抜けは「骨格」で決まる
ビニールハウスが破れたあの日、骨組みの大切さを改めて実感しました。
吹き抜けリビングも同じです。見た目の開放感は大事。でも、その開放感を支える骨格――梁、構造、将来への可変性――を最初に設計しておくことが、長く安心して住み続けるための本当の意味での「豊かさ」につながる。
開放感と強さ、今と将来――どちらも諦めない設計を、エスサイクル設計は大切にしています。
ではまた!
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